はじめに:その土地、本当に「お買い得」ですか?見落としがちな附帯工事費の罠

横浜・東京で理想の注文住宅を建てるため、土地探しに奮闘されていることと思います。魅力的な価格の土地を見つけた時、「これは掘り出し物だ!」と心が躍るかもしれません。
しかし、その土地価格だけを見て判断するのは非常に危険です。なぜなら、家を建てて安全に暮らせる状態にするためには、土地代金とは別に「附帯工事費(ふたいこうじひ)」という、時に数百万単位にもなる費用が発生するからです。
特に、坂道や高低差の多い横浜や、古い住宅が密集する東京の一部エリアでは、この附帯工事費が総予算を大きく左右するケースが少なくありません。
「予算オーバーで理想の間取りを諦めることになった…」
「契約後に想定外の地盤改良費用を請求された…」
そんな後悔をしないために、この記事では、土地購入前に必ず知っておくべき附帯工事費の全貌を、具体的な内訳と費用目安、そして見るべきチェックポイントまで、徹底的に解説します。総予算を正確に把握し、賢い土地選びを実現するため、ぜひ最後までお読みください。
そもそも「附帯工事費」とは?家づくりにかかる3つの費用

注文住宅の総費用は、大きく分けて以下の3つで構成されます。附帯工事費がどこに含まれるのか、まずは全体像を把握しましょう。
- 本体工事費(総費用の約70~80%)
- 建物そのものを建てるための費用。構造、内外装、キッチンや浴室などの設備費が含まれます。
- 附帯工事費(総費用の約15~20%)
- 建物を建てる「前」と「後」に必要な、敷地に関わる工事費用。造成工事やインフラ整備、外構工事などがこれにあたります。
- 諸費用(総費用の約5~10%)
- 工事以外にかかる費用。登記費用、住宅ローン手数料、火災保険料、税金などが含まれます。
多くの人が「坪単価」で注目するのは「1. 本体工事費」ですが、土地の状態によっては「2. 附帯工事費」が大きく膨らむことを覚えておく必要があります。
【完全リスト】附帯工事費の主な内訳と費用目安

ここからは、附帯工事費の具体的な項目と、横浜・東京エリアにおける費用の目安を見ていきましょう。ご自身の検討している土地に、どの工事が必要になりそうか、チェックしながら読み進めてください。
1. 土地を安全な状態にするための工事
| 工事項目 | 内容 | 費用目安 |
| 地盤調査費 | 土地の強度(地耐力)を調べる調査。この結果に基づき、地盤改良の要否を判断する。 | 5万円 ~ 10万円 |
| 地盤改良工事費 | 地盤が弱い場合に、建物を安全に支えるために地盤を補強する工事。表層改良工法、柱状改良工法などがある。 | 30万円 ~ 150万円以上 |
| 造成・整地費用 | 土地の高低差をなくしたり、傾斜を平らにしたりする工事。 | 30万円 ~ 100万円以上 |
| 擁壁(ようへき)工事費 | 崖や高低差のある土地で、土砂崩れを防ぐための壁を造る工事。横浜エリアでは特に重要。 | 100万円 ~ 数百万円 |
| 既存建物の解体費用 | 古家付きの土地を購入した場合、既存の建物を解体・撤去する費用。木造か鉄骨か、広さによって変動。 | 100万円 ~ 300万円 |
2. 生活インフラを整えるための工事
| 工事項目 | 内容 | 費用目安 |
| 給排水管引き込み工事 | 敷地内に上下水道管を引き込む工事。前面道路の配管からの距離で費用が変動。旗竿地では長くなりがち。 | 40万円 ~ 80万円 |
| ガス管引き込み工事 | 都市ガスを利用する場合、敷地内にガス管を引き込む工事。オール電化の場合は不要。 | 15万円 ~ 20万円 |
3. 建物の外回りを整える「外構工事」
| 工事項目 | 内容 | 費用目安 |
| 駐車場・アプローチ工事 | コンクリート舗装やカーポートの設置、玄関までの通路を整備する工事。 | 50万円 ~ 150万円 |
| フェンス・境界ブロック | 隣地との境界を明確にし、プライバシーや防犯性を高めるための工事。 | 30万円 ~ 100万円 |
| 植栽・造園工事 | 植木や芝生を植え、庭をデザインする工事。どこまでこだわるかで大きく変動。 | 20万円 ~ |
※注意: 上記の費用はあくまで目安です。土地の広さ、形状、高低差、前面道路の状況、使用する材料などによって大きく変動します。
【土地条件別】附帯工事費が高くなるケースと注意点

どんな土地だと附帯工事費が高額になりやすいのでしょうか。横浜・東京で特に注意したい3つのケースをご紹介します。
Case 1:坂道・高低差のある土地(横浜市、川崎市、多摩地域など)
横浜の山手エリアや川崎市の丘陵地帯に多い高低差のある土地は、眺望が良い反面、擁壁工事(※)や造成費用(※)がかさむ代表例です。
- チェックポイント:
- 既存の擁壁は安全か?(ひび割れ、傾きがないか)
- 擁壁を造り直す場合、数百万円の追加費用がかかる可能性がある。
- 土地の形状によっては、建物の基礎を深くする必要があり(深基礎)、基礎工事費も割高になる。
※語句の説明
擁壁工事:崖や高低差のある土地が崩れてこないように、コンクリートなどで頑丈な壁を造って斜面を支える工事
造成工事:家が安全に建てられるよう、斜面を削ったり土を盛ったりして土地の形を平らに整える工事高低差や変形地は、費用がかかる一方で、設計次第では眺望の良いリビングやプライベートな中庭など、唯一無二の魅力的な空間を生み出す可能性も秘めています。土地形状を活かす設計のポイントは、こちらの記事で詳しく解説しています。
>>【横浜・東京の注文住宅】土地形状を最大限活かす設計ポイント|旗竿地・変形地・高低差のある敷地も快適に
Case 2:道路との関係性が複雑な土地(旗竿地、狭小地など)
前面道路が狭かったり、敷地が奥まっていたりする土地も注意が必要です。
- チェックポイント:
- 前面道路の幅は4m以上あるか?
4m未満の場合、セットバック(敷地後退)(※)が必要となり、有効な土地面積が減る。 - 重機やトラックが敷地まで入れるか?
入れなければ、手作業が増えて人件費が割高になる。 - 上下水道管やガス管はどこまで来ているか?
敷地までの引き込み距離が長い旗竿地などは、インフラ整備費用が高額になる。
- 前面道路の幅は4m以上あるか?
※語句の説明
セットバック(敷地後退):幅が4m未満の狭い道路に面した土地に建物を建てる際、道路の中心線から2mの位置まで敷地を後退させるという建築基準法のルール
Case 3:地盤が軟弱な土地(川沿いや埋立地など)
ハザードマップで浸水想定区域になっているエリアや、川沿いの低地などは、地盤改良工事(※)が必要になる可能性が高い土地です。
- チェックポイント:
- 自治体のハザードマップを確認する。
- 周辺の土地で地盤改良工事が行われた実績があるか確認する。
- 土地探しの段階で建築会社に相談し、簡易的な地盤調査を依頼することも有効。
※語句の説明
地盤改良工事:建物の重さで家が沈んだり傾いたりしないよう、弱い地盤を補強して強くする工事
失敗しないための見積もり比較とパートナー選び
附帯工事費は専門的な領域のため、一般の方が正確な金額を予測するのは困難です。だからこそ、信頼できるプロのパートナー選びが重要になります。
見積書で確認すべき3つのポイント
複数の会社から見積もりを取る際は、総額だけでなく、以下の点を確認しましょう。
- 「附帯工事一式」になっていないか?
- 信頼できる会社は、「地盤改良工事」「給排水管工事」など、項目ごとに詳細な内訳と金額を明示します。「一式」という表記で詳細が不明な場合は要注意です。
- どこまでの工事が含まれているか?
- 見積もりに外構工事が含まれているか、含まれていない場合は別途どのくらいかかるのかを必ず確認しましょう。
- 追加費用の可能性について説明があるか?
- 「地盤調査の結果、改良工事が必要になった場合は別途〇〇万円程度かかります」など、起こりうるリスクと費用の可能性を事前に説明してくれる会社は誠実です。
まとめ:総予算の把握こそ、理想の家づくりの第一歩
横浜・東京での注文住宅づくりは、土地探しが成功の半分を占めると言っても過言ではありません。そして、その土地選びの成否を分けるのが、目に見える土地価格だけでなく、附帯工事費まで含めた「総予算」を正確に把握できるかどうかです。
一見すると割安な土地でも、高額な附帯工事費がかかり、結果的に予算を圧迫してしまうケースは後を絶ちません。逆に、多少価格が高くても、附帯工事が不要な土地の方がトータルコストを抑えられることもあります。
大切なのは、土地と建物を別々に考えるのではなく、「この土地に、この家を建てると、総額でいくらかかるのか」という視点を常に持つことです。そのためには、土地探しの段階から、そのエリアの特性を熟知し、造成やインフラ、法律にまで精通した建築のプロをパートナーにすることが、最も賢明な選択と言えるでしょう。
参考元
記事作成にあたり、正確性を担保するために以下の公的機関および業界団体の情報を参照しました。
