注文住宅を建てるなら、リビングには床から天井まで届くような「大きい窓」を設置して、明るく開放的な空間にしたい。多くの方が、そんな理想のイメージをお持ちではないでしょうか。
しかし、その憧れだけで窓のサイズや配置を決めてしまうと、「こんなはずじゃなかった」と後悔するケースが少なくありません。特に、「窓が大きすぎて寒い」「夏は逆に暑い」といった温熱環境に関する失敗は、日々の暮らしの快適性や光熱費に直結する重大な問題です。
この記事では、横浜・神奈川・東京エリアで多くの注文住宅を手掛けてきたハビタットの視点から、大きい窓のメリット・デメリットを徹底的に比較分析。なぜ後悔が生まれるのか、その理由と具体的な対策、特に「寒い」「暑い」を防ぐための断熱対策について、私たちの目線で詳しく解説します。
理想の開放感と快適な暮らしを両立させるための「窓選び」について一緒に見ていきましょう。
注文住宅の「大きい窓」は後悔の元?憧れと現実のギャップ

まずは、多くの方が「大きい窓」に惹かれる理由と、実際に住んでみてから気づく「現実のギャップ」について整理しましょう。
なぜ大きい窓に憧れるのか?
注文住宅において、大きい窓が人気なのには明確な理由があります。
- 圧倒的な開放感
壁一面の窓(掃き出し窓やFIX窓)は、室内と屋外をゆるやかにつなぎ、視覚的な広がりを生み出します。特にリビングやダイニングに採用することで、実際の床面積以上の開放感を演出できます。 - 豊かな採光
大きな開口部からはたっぷりと自然光が入り込み、日中は照明いらずの明るい室内を実現します。 - 美しいデザイン性
シンプルでモダンな建築デザインにおいて、大きい窓は象徴的な要素となります。洗練された外観と、室内からの美しい眺望(ピクチャーウィンドウ)は、注文住宅ならではの満足感を与えてくれます。
これらのメリットは、確かに魅力的であり、ハビタットでもお客様の「こだわり」としてご要望いただくことが多い項目です。しかし、これらのメリットは、いくつかの「デメリット」と表裏一体であることを知っておく必要があります。
よくある後悔ポイント「こんなはずじゃなかった」
憧れだけで採用した結果、住み始めてから「こんなはずじゃなかった」と後悔する声が多いのも事実です。
- 「冬、窓の近くにいると寒い。暖房をつけても足元がスースーする…」
- 「夏は日差しが強すぎて、エアコンが効かないほど暑い。電気代がすごいことに…」
- 「開放的すぎて、外からの視線が気になり、結局一日中カーテンを閉めている」
- 「窓が大きすぎて掃除が大変。特に2階のFIX窓は手が届かない…」
これらの「注文住宅の後悔ポイント」は、設計段階での十分な検討と対策によって、その多くが回避可能です。次の章で、具体的な失敗例とその理由を深掘りします。
「窓が大きすぎて後悔」よくある5つの理由と失敗例

なぜ「大きい窓」は失敗したと感じやすいのでしょうか。最も多く聞かれる5つの理由を、具体的な失敗例と共に解説します。
理由1:寒い(冬)・暑い(夏) – 最大の後悔ポイント
これが、大きい窓に関する後悔の中で最も深刻な問題です。
窓は「家の中で最も熱が出入りする場所」だという事実をご存知でしょうか。一般的な住宅において、冬に暖房の熱が逃げる割合の約6割、夏に外から熱が入ってくる割合の約7割が「窓」を経由していると言われています。
窓が大きければ大きいほど、その「熱の通り道」も大きくなります。
- 冬の失敗例(寒い)
「リビングに大きな吹き抜けと掃き出し窓を採用。デザインは理想通りだったが、冬になると窓際から冷気が流れ込む『コールドドラフト現象』※が発生。暖房をつけても室温が上がらず、常に寒い。結局、窓際にパネルヒーターを増設する羽目になり、費用もかさんだ」 - 夏の失敗例(暑い)
「西側に大きなFIX窓(はめ殺し窓)を設置したら、午後の西日で室内が灼熱地獄に。日差しが強すぎてテレビも見づらく、冷房効率も最悪。デザイン性を優先した結果、夏はとても快適とは言えない空間になってしまった」
このように、窓の断熱性能を考慮せずにサイズだけを大きくすると、冷暖房効率が極端に悪化し、光熱費の高騰に直結します。
※語句の説明
コールドドラフト現象:窓や壁などの冷たい表面付近で空気が冷やされ、下降気流となって室内に冷たい風を感じさせる現象
理由2:外からの視線が気になる
開放感を求めた結果、プライバシーを失ってしまうケースです。
- 失敗例(視線)
「道路に面した南側に、憧れだった全面ガラス張りのリビングを採用。しかし、実際に住んでみると通行人や近隣の家からの視線が常に気になり、全く落ち着かない。結局、一日中レースカーテンどころか厚手のカーテンまで閉めっぱなし。これでは何のために大きな窓にしたのか分からない…」
開放感とプライバシーはトレードオフの関係です。特に都市部の住宅が密集する横浜・神奈川エリアでは、土地の条件を読み解き、視線をどうコントロールするかという設計力が問われます。
理由3:掃除・メンテナンスが大変
現実的な問題として、掃除の手間があります。
- 失敗例(掃除)
「吹き抜けに設置した大きなFIX窓は、確かに明るくておしゃれ。でも、内側も外側も掃除するには高所用のモップでも届かず、結局業者に頼むしかない。台風の後など、汚れが目立っても簡単にはきれいにできずストレスになっている」
掃き出し窓も面積が広いため、窓拭きはかなりの重労働になります。
理由4:防犯面での不安
窓は、空き巣などの侵入経路として最も狙われやすい場所です。
- 失敗例(防犯)
「1階の裏手に大きな窓を設置したが、人目につきにくい場所だったため、かえって防犯面での不安が大きくなった。シャッターを付ければよかったと後悔している」
窓が大きければ大きいほど、「割られやすい」という心理的な不安も増大しがちです。
理由5:家具の配置が制限される
間取り設計上の盲点です。
- 失敗例(間取り)
「リビングの二面を大きな窓にしたら、壁面がほとんどなくなってしまった。ソファは置けても、テレビボードや収納棚を置くスペースがなく、家具の配置に非常に困っている」
窓は「壁ではない」ため、窓を増やすほど家具を置くための壁が減るという、当たり前の事実を見落としがちなのです。
後悔しないために!「寒い・暑い」を防ぐ窓の断熱対策

では、これらの後悔、特に最大の懸念である「寒い」「暑い」を防ぐにはどうすればよいのでしょうか。答えは、「窓の性能(断熱性)」と「設計の工夫(配置)」にあります。
窓の性能(断熱性)が鍵!サッシとガラスの選び方
窓の断熱性能は、「サッシ(窓枠)」と「ガラス」の組み合わせで決まります。ここを妥協すると、後で取り返しのつかない後悔につながります。
1. サッシの種類(窓枠)
サッシの素材によって、熱の伝わりやすさが全く異なります。
- アルミサッシ
従来から多く使われていますが、熱伝導率が非常に高い(熱を通しやすい)ため、外の寒さ・暑さがそのまま室内に伝わってしまいます。結露の主な原因にもなります。 - アルミ樹脂複合サッシ
室外側がアルミ、室内側が樹脂でできています。アルミサッシよりは断熱性が高いですが、根本的な解決には至りません。 - 樹脂サッシ
熱伝導率がアルミの約1/1000と極めて低く、圧倒的な断熱性能を誇ります。結露の発生も大幅に抑えることができます。
2. ガラスの種類
現在、新築住宅では「ペアガラス(複層ガラス)」が主流ですが、さらに高性能な選択肢があります。
- ペアガラス(複層ガラス)
2枚のガラスの間に空気層があるもの。これだけでは十分とは言えません。 - Low-E複層ガラス
ガラスの表面に特殊な金属膜(Low-E膜)をコーティングしたもの。この膜が、夏の日射熱(暑さ)を反射し、冬の室内の暖房熱(暖かさ)を外に逃がしにくくします。断熱対策と遮熱対策の両方に効果的です。 - トリプルガラス
3枚のガラスで構成され、2つの空気層(またはアルゴンガス層)を持つ、現在最高レベルの断熱性能を持つガラスです。樹脂サッシと組み合わせることで、寒い冬でも窓際の冷え込みを劇的に改善できます。
「窓の配置」と「方角」で快適さは決まる
高性能な窓を採用しても、その配置を間違えると失敗します。太陽の動き(方角)に合わせた設計(パッシブデザイン)が不可欠です。
- 南側
冬は貴重な日差し(日射取得)を取り入れ、室内を暖めるために大きな窓を設けるのに適しています。ただし、夏は日差しを遮る工夫が必要です。 - 北側
一年を通して安定した柔らかな光が得られますが、冬は最も冷えやすいため、窓のサイズは最小限にするか、トリプルガラスなど最高性能の窓を採用すべき方角です。 - 西側
夏の午後に強烈な「西日」が差し込み、室温を急上昇させる最大の原因となります。西側の大きな窓は、「暑い家」になるリスクが最も高く、原則として避けるか、窓を小さくする、遮熱性能が非常に高いガラスを選ぶなどの厳重な対策が必要です。 - 東側
朝の光を取り入れることができますが、夏は朝日でも室温上昇の原因になるため、遮熱対策を考慮します。
軒(のき)や庇(ひさし)の活用で夏の「暑い」を防ぐ
特に南側の窓の「夏の暑い日差し」を防ぐために有効なのが、日本の伝統的な建築の知恵である「軒(のき)」や「庇(ひさし)」です。
太陽は、夏は高く、冬は低く動きます。軒や庇を適切に設計することで、夏の高い日差しは遮り(日射遮蔽)、冬の低い日差しは室内に取り入れる(日射取得)ことが可能になります。
エアコンだけに頼らず、建物の設計そのもので快適性を高めることが、注文住宅の醍醐味であり、後悔しないための重要な対策です。
メリットを活かす!大きい窓を採用する際のポイント

「寒い」「暑い」という温熱問題以外のデメリット(視線・防犯・掃除)にも、設計段階で対策を講じることが可能です。
視線対策:開放感とプライバシーを両立する工夫
- 窓の配置を工夫する
隣家の窓と真正面にならないよう位置をずらす、道路からの視線が届きにくい高い位置に窓(高窓・ハイサイドライト)を設ける。 - 外構(フェンス・植栽)で遮る
建物と道路の間に、デザイン性の高いフェンスや樹木(植栽)を配置し、自然な目隠しとします。 - ガラスの種類を使い分ける
視線が気になる場所(浴室や洗面所、道路に面した窓の下部など)には、「型板ガラス(すりガラス)」や「ブラインド内蔵サッシ」などを採用する。
ハビタットでは、土地の状況とお客様のライフスタイルをヒアリングし、こうしたプロならではの解決策をご提案します。
防犯対策:安心・安全な窓辺を作る
- 防犯ガラス(CPマーク付き)を採用する
2枚のガラスの間に強靭な中間膜を挟み、割れにくい構造にしたガラスです。 - シャッター・雨戸を設置する
物理的な防御として非常に有効です。特に1階の大きな窓や、人目につきにくい場所の窓には設置を推奨します。 - 補助錠や防犯センサーを活用する
窓の防犯性能を高めるためのオプションも多数あります。
掃除のしやすさ:設計段階で考えておくこと
- 開閉方式を検討する
手が届かない高所の窓でも、オペレーターハンドルで開閉できる「縦すべり出し窓」などは、外側のガラスも室内から拭ける場合があります。 - FIX窓のサイズと場所
大きすぎるFIX窓や、高所すぎる窓は、掃除が困難になることを設計段階で認識し、専門業者のクリーニング費用を将来的に見込んでおくか、サイズ・配置を見直す必要があります。
まとめ:横浜・神奈川で叶える「快適で開放的な窓」
「大きい窓」は、それ自体が「寒い」「暑い」「後悔」の原因なのではありません。失敗の根本的な原因は、「建物の断熱性能や土地の条件に見合っていない、不適切な窓を選んでしまった」ことにあります。
今回の記事では窓による断熱性能についてお話ししましたが、寒い、暑いなどの断熱性能は窓だけではなく、建物の構造なども要因の1つというのは忘れないでください。
>>【第2回-注文住宅の始め方-】木造と鉄骨造どっち?耐震性・断熱性の違いと構造の選び方
憧れの開放的な空間を実現しつつ、後悔しないためには、以下のポイントが不可欠です。
- 窓の性能を妥協しない(樹脂サッシ + Low-E複層ガラス以上)
- 方角の特性(特に西日)を理解して配置する
- 軒や庇を活用し、夏の日差しを遮る設計(パッシブデザイン)を取り入れる
- 視線や防犯、掃除といった現実的なデメリットへの対策も同時に行う
これらの複雑な要素をパズルのように組み合わせ、お客様の「理想」と「快適な暮らし」を両立させるのが、私たちプロの工務店の仕事です。
>>YKKAP「暑さや寒さをやわらげる”断熱窓”」
横浜・神奈川・東京エリアで、「デザインも性能も妥協したくない」「大きい窓のある開放的な家を建てたいけれど、失敗したくない」とお考えなら、ぜひ一度ハビタットにご相談ください。
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